【読書】  高橋和夫「中東から世界が崩れる」

中東関係、未だに難しくてよくわからない…

とはいえ、国際関係の修士号取ったのにずっとそう言っているわけにもいかないので、カメルーンでの「読書の夏」を存分に楽しんでいるこの機会に、読みました。

 

 

著者の高橋和夫さんは、コロンビア大学の先輩のようです。

中東研究者。

 

もともとあんまり知識がないから、学ぶことばっかりだったのですが、 特にふむふむ、と理解が進んだのは

   ⇒教義の上では大きな差はない。お家騒動。

  • 欧米は、中東の政治体制について「西洋的価値観では民主的な選挙が望ましいが、実際に選挙が行われるが班西洋的なイスラム主義が政権を取ってしまう」ので、民主的ではないが世俗的で欧米に近い政策をとる軍事独裁体制を支援したりする。エジプトで民主的な選挙によってムスリム同胞団が政権を取った時も否定的な立場を取ったし(その後軍事クーデーターでつぶされてしまった)し、94年にパレスチナ自治区ハマスが選挙に勝利した時も公然と無視した。

   ⇒西洋化への絶望と欧米への不満を起点としてイスラム過激派が台頭。

  • サウジはあまり石油以外の力がなく、国民には「税金は払わなくていい代わりに政治には口を出すな」という感じの国。外交の表舞台にはずっと出てこなくて資金力で影響力を行使してきたけれど、ここ数年、若い王子が国防を担当するようになって大きな変化が出てきた。

   ⇒イエメンへの武力介入や、イランとの国交断絶など。

  • イランの核合意成立前に、国際社会がイランにやっていた経済制裁がうまくできたのは、サウジが原油安政策を行っていたから。もしサウジが増産してなかったら、欧州も日本も石油の調達先としてのイランを外したくないから、いくらアメリカが呼びかけても対イラン制裁は難しかったはず。一方で、核合意成立でイラン制裁が解除された後でも、サウジは石油のシェアを奪われたくないし、イランはもちろん売りたいし、でマーケットに石油が溢れている。

   原油市場の安値の原因。国交断絶により生産調整の協調はさらに困難。

  • 20世紀初頭にイランで石油が発見された時、イギリスがすぐのイラン原油の生産販売を独占し、莫大な利益を上げた。しかしWWII後イラン国民にその不満が広がり、その声を代表したモザデク首相が石油産業の国有化を断行。この動きが他の産油国にも広がることを懸念した欧米の石油会社はイラン原油をボイコット。こうして追い詰められた(民主的に選ばれていた)モザデク政権を、米英の諜報機関が53年にクーデターを起こさせて転覆させた。テヘランの米大使館がクーデターの実施本部だった。

   ⇒アメリカ不信の原点。

   ⇒関係改善に取り組んだハタミ政権の対米外交の終焉。

 

等々、内容が濃いけれどわかりやすい構成で、とても勉強になりました。

同時に、ややイランひいき(?)なのかな、と思い、いずれにせよイランへの認識が少し変わりました。

ペルシア人国家のイランが大国意識を持つに至る考察もおもしろかったです。

 

これがこの著者だからなのか、どうなのか、それを知る為には他にも勉強が必要で、こうしてどんどん読むべき本が増えていきます。

 

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ちなみに、この本の前に実は、まず現代史の基本的なところ押さえなければ、と思って買ったものの一年以上 TSUNDOKU になってしまっていた池上さんの本をやっと読みました。

積ん読、日本語がそのまま英語で使われているんですよね~。"stockpiling of books" ぷぷぷ。)

 

 

読んだらすごくわかりやすくて、ぐんぐん読めて、いろいろ復習になったものの、、、

わかりやすすぎてこんなに簡単にわかっていいのか、 いや、多分もっと複雑な部分も学ばなきゃいけない、特に中東。と思って高橋さんの本を読んだという流れでした。

 

池上さんの本も、大まかにわかりやすく把握して、そのより注目する分野を見極める為にとても良いです。