【読書】 前野ウルド浩太郎 「バッタを倒しにアフリカへ」

「人類を救う為、そして、自身の夢を叶えるために、若い博士が単身サハラ砂漠に乗り込み、バッタと大人の事情を相手に繰り広げたし等の日々を綴った一冊」

 

という紹介を読んだだけでおもしろいし、やっぱりすごくおもしろかった本です。

  

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

 

 

今、初めての地カメルーンで、特にドゥアラでは周りに日本人がいない状態で日々アウェー経験をしているせいもあり、異文化の場所で奮闘するこういう本にとても惹かれます。

 

(もともとそういう「アウェーで頑張る」シリーズが好きなので、今も昔も変わらぬ愛読書は、夏目漱石坊っちゃん」です。アウェーでも変わらぬ無鉄砲っぷりにスカッと。失礼すぎる言い回しにゲラゲラ。故郷に残る老人、清への想いにホロリ。)

 

モーリタニアの砂漠と、カメルーンの熱帯の気候では環境は違えど、ついつい色々と重ねて共感しながら読みました。

 

例えば、ドライバーであり頼れる相棒のティジャニさんという人がよく出てくるのですが、私もカメルーンで頼もしい同僚にお世話になっていることと重ねたり。

 

(スパゲティを大量に茹ですぎるクセがある) ティジャニさんは実は、組織から給料をもらっているのに著者からも二重で給料をもらっていたという悪さも後から発覚したのでそういう点でこちらの同僚とは違うけれど…

 

でもこんなアウェーな場所で、現地をよく知りバイタリティに溢れる力強い相棒を得られるというのは何物にも代えがたく、読みながら「ティジャニさんがいてよかった」と何度も思ったのでした。

 

そして、著者の熱意と使命感が素晴らしい。

バッタ研究所の所長が、多くの研究者はアフリカに来たがらないけれど論文ばかり増えていく、という話をため息交じりに著者に向かって言った時の、返答の言葉

 

「誰か一人くらい人生をささげて本気で研究しなければ、バッタ問題はいつまで経っても解決されないと思います。私はその一人になるつもりです。私はサバクトビバッタ研究に人生を捧げると決めました。私は実験室の研究者たちにリアルを届けたいのです。アフリカを救いたいのです。私がこうしてアフリカに来たのは、きわめて自然なことなのです。」

 

ちょっとうるっとしました。

 

そして、博士号を取ったのにその後夢だった昆虫博士として食べていくのは非常に狭き門で、世の中「末は博士か大臣か」ともてはやされた時代とはもう程遠い、という話もこの本のもう一つの重要なテーマだと思います。

著者は、きっと持ち前のユーモアさとイノベイティブさで人との差をつけて前進しているけれど、やはり博士号取ったからと言ってそれで社会に貢献する前に、仕事がない、という苦悩は多くのポスドクが味わっているようです。

研究費削減や日本の大学のパワーが下がることで、ノーベル賞を日本はいずれ取れなくなる、という記事をこの前も見たけれど、博士になる能力とやる気がある人が夢を持てて、活躍できる社会でないといけないなあ、と(博士号を頑張って取るガッツはそもそもない私の一般人の意見として)思います。

  

とにかく勇気をもらう本。

分野が違っても、「何か自分を元気づける本がほしい 」と思うような時、自己啓発本や「成功者の秘訣」みたいな本を取ろうとしているあなたに、ぜひ今回はこちらを!とおすすめしたい本です。