【読書】 横山秀夫 「64(ロクヨン)」

 

どっぷりその世界にはまれるような長編小説を読みたいな、という気分だったので、Kindle で前後編合本になっているしレビュー評価も高い

 

 

を読みました。

横山秀夫さんの本は、「クライマーズ・ハイ」がすごく面白かったから期待大です。

 

そしてやっぱりとてもおもしろくて、カメルーンの熱帯気候の中でグングンと、迫力ある警察ドラマの世界に引き込まれました。

 

本当に困ったことばっかり起こる中、主人公の葛藤の心理描写が素晴らしく、読んでいて一緒に苦しくなるほど。でも先が気になりすぎて読むのを止められませんでした。

 

・・・

 

でも一個問題が・・・

(こういうこと書くと嫌われそうなんですが書きます)

 

主人公の三上がトップを務める警察の広報室で、3人部下がいるのですが、その中の一番若い部下が女性警官で、その美雲というキャラクターに対する、三上の心理描写がどうもあれすぎて、とってもとってもひっかかる…

 

三上は正義感が強く、立派な男性のはずなのに、美雲への考え方を述べるシーンだけが…

はっきり言って毎回すごく気持ち悪いです

 

なんなのかというと、

広報室は記者対策をしなくてはならない部署だから、関係がこじれそうな時は「息抜き」みたいな感じで広報室の人員が記者を飲みに誘ったりする場面があるのですが、問題が多発して記者対策はかなり難しい局面に立たされます。

それを見かねた美雲は自分も記者対策の役に立ちたいと言うものの、三上はなかなか承諾しない。

「美雲が記者対策をすること=記者の懐柔に使う」

という図式以外考えられなくて、訓練を受けた警察官のことを「若くてきれいな女性」という記号でしか見ていない感。

 

ああ、すごく「女性は自分が守らなければならない」みたいな考え方なんだなあ。

そして、その美雲を最後まで記者との飲み会に参加させないように言い張ることが、譲れないこと(=自分が誇れること)なんだなあ。

家族でもない、仕事上のプロフェッショナルな関係性のはずなのに。

となんだか居心地悪く思います。 

 

しかし、そういう考え方を修正させられる、「ハッとさせられる」みたいな局面があり、お、ようやく、という場面も出てきました。

 

あまりにも三上が、美雲が役に立ちたいという気持ちを退けて「守ろう」とするので、美雲が「私だけ汚さないようにして、私に綺麗なところを全部押し付けて、まだ自分にも汚れてない気持ちがあるって狡いです。」

と三上に対して言ったわけです。

 

それを皮切りに美雲が自分の強い意志を伝えて、三上もそれを認めて、今後は美雲ももっと記者対策に加わるという方向で解決、となった・・・

 

でもその後がびっくり。

主人公は心の中で、そのピリッとした話を終えた後の美雲が部屋を出る時に振り向いた顔について、

「距離感のないまなざしだった。感謝だか親愛の情が滲み出たのだろうが、

   それは同衾した女が行為の後に見せる馴れ馴れしさにも見えた」

 

 

(@_@)

 

 

麗しい見た目の女性の部下が相手をハッとさせるきちんとした意見を行った時、

相手の男性上司は急にすごく親しくなったような気持ちで

「同衾」という言葉が出てくるような気持ちになるのか…

 

「立派な上司」風に描かれている男性がこういう考え方をしていると思うと、

いやはや、私は時速150㎞で引きました。

(もちろん一般的な上司と部下の恋愛を否定するわけでなくて、それはどんどんガンガンぜひ!と思うのですが、この主人公は既婚だし武骨なキャラクターだから。)

 

もしかしたらこういう部分が、ある層の男性読者の心をがっちり掴んでいるのかもしれず、それ自体はニーズはそれぞれなのでもちろんよいし、

作者や出版社が意図している読者と私が違うのに、足を踏み込んじゃったのかもしれないんだなあ、と思ったりも。

でも、30代女性だって、緊迫した警察×ミステリー読みたかったから・・・

 

ここに挙げたのは二例だけれど、美雲が出てくる場面はほぼ例外なくこんな感じで

私は「ゾゾゾ」とします。

20年前くらいの小説なのかな、とも思って調べたけど、2012年刊。うーん。

 

「男性作家が描く女性像は非常に限定されている」みたいな議論の分野はあって、そういう話をガミガミしたいわけではないんですが。(結果的にしているけれど)

 

そして私だって、例えば映画のイケメン俳優を、ただただ無批判にイケメンとして消費している時に、気づいていない不適切な部分がある時もあるのかも。

 

・・・でもどう思います?

既にこの小説のファンの人で、上記の様な引っ掛かりはなく読んだ人が嫌な気持ちになったら申し訳ないです。

そして私も、その引っ掛かりを棚上げして最後まで一気に読めるくらいにおもしろかったのだけど、ただいつものように些細なことをダラダラ考えて、ブツブツ拙い文章を書いただけという。

 

話題になった小説だから、もし読んだ人いたらぜひ感想聞きたいです。 

 

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一方、美雲の件がすごく引っかかるのにも関わらず最後まで読ませたというのは、それだけ面白いということ。

 

主人公の三上は、

本当は刑事としてずっと活躍していたかったのに広報室によく理由がわからないまま異動となり、

広報室を管轄する警務部の上司はすごく嫌な奴だし、

古巣の刑事部は広報室の人間をスパイのように扱うし、

記者たちには非難されまくるし…

しかも娘は家出して心配でたまらない状況。

 

そんな四面楚歌な状況で、でも腐らず広報官としての仕事に取組み、後編で記者と対峙する場面等では涙が出ました。

そしてクライマックスも、そうきたか!

三上とその上司の松岡の関係性にも泣かされました。

 

最初から最後まで緊張感が途切れない、本当に(引っかかる部分を除けば)のめり込める作品でしたので、仕事のことを忘れて小説世界に浸りたい時等に、ぜひご一読を。

(そして読んだら私と感想を語り合わせてください)