コロンビア大学 SIPA:修論

 

 

本当はアメリカに大学院留学している間に、ブログに書き留めておきたいようなことがたくさんあったのですが、いつも崖っぷちで書けず。

後からでも徐々に書きたいな、と思っていて、今回は卒業プロジェクトで行ったウガンダでのリサーチについて書きます。

 

 【目次】 

 

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概要

タイトルには「修論」と書きましたが、実はコロンビア大学SIPA(School of International and Public Affairs)では、個人で書く修士論文ではなく、それに相当するものとして Capstone というグループプロジェクトを行います。

これは、おおまかにいうと、生徒たちがコンサルタントとなって、外部の組織のクライアントの為に提言等を行うものです。

 

※私は EPD (Economic and Political Development) の専攻で、この専攻のみCapstoneを EPD Workshop と言って少し区別しており、以下はEPDの内容です。

 

 

 

まず最終学期の一つ前の学期(二年目の1セメスター目)に、Methods for Development Practice、という、導入の内容の授業を受けます。このように2セメスターに渡って行うのが、 EPD Workshop と他の Capstone の大きな違いです。

 

授業の前半では、開発分野の実務家になる為に必要なメソッド、例えばプロジェクト立案、課題認識、評価&モニタリング等についてグループワークを行いながら進めていきます。

そして半ばになると、来学期のEPD Workshop のプロジェクト一覧が発表されます。クライアントの名前からプロジェクトの内容まで、仕事のTORみたいです。

生徒はその中から自分の興味に沿ったプロジェクトを第5希望まで提出し、EPD専攻のダイレクター(兼、Methods for Development Practiceの授業の先生)が生徒の希望やこれまでの経歴、スキル等を考慮し、各プロジェクトへ割り当てます。

 

クライアントは、様々な開発機関、例えばUNDP、UNICEF、世銀といった国際機関、また大小様々なNGO等の機関が名を連ね、また対象地域も、アフリカ、アジア、ラテンアメリカと様々でした。

 

 

選考結果

私は幸運にも第一希望のプロジェクトに入れました。

クライアントはTransparency International という国際NPOで、

プロジェクト内容はウガンダにてICT (Information and Communication Technology) の活用がコラプション(特に土地セクター)とジェンダーに与える影響について調査・提言するプロジェクトです。

 

つまりキーワードは、この5つ。

 ウガンダ

 土地

 コラプション(腐敗)

 ジェンダー

 ICT

 

ウガンダでは、アフリカの他の国でも多々見られるのと同様に、政府のコラプション(腐敗、贈賄)が大きな問題となり国の発展を阻害しています。

また土地の取得にあたり、古くからの慣習法と国の法律が同時に存在している上、内容も複雑で一般の人にはわかりづらく、また政府が急に取り上げとりもするので数多くの問題が起きています。

さらに土地を買おうとするプロセスでも、村のリーダーや公的機関の職員から賄賂を求められることが横行しているし、土地関連で問題が起きたとしても警察が機能していなかったりします。

そしてその被害を女性がより強く被りやすいというのも問題です。なぜなら特に地方は父権的で女性の権利が限られており、また家事や子育ての負担をほぼ全て女性が負うことが通常である中、女性が財産を持って土地を買えるケースはほぼなく、結果戸籍の名前は夫の名前になり、離婚や死別の際には女性は土地の権利を持たないことが多いためです。

 

こうした状況に対して、テクノロジー(ICT)を用いて何ができるかをクライアントに提言するのがこのプロジェクトです。政府のデータをウェブ上で公開して透明性を向上したり、一般の人がスマホのアプリを利用して、賄賂を要求された等のケースを通報したりすることで、コラプションを減らしていこうという動きが世界中で活発になっています。

 

クライアントのTransparency International は、世界中でコラプションと戦っているNPOで、Corruption Index という国のコラプション度合いのランキングを発行していることで有名です。

(ちなみにこのランキングの2016年版で、世界1位はデンマーク、日本は20位、ウガンダは 151位でした。)


 

選考プロセスの性質上、仲良しグループで組むわけではないので、とはいえ何か月も一緒に行う重たいグループワークなので、実は入学する前からどんなチームになるか心配していました…

ご想像の通り、みんな忙しくてギリギリな中、7カ月くらい毎日のように協力しなくてはならない、卒業がかかったプロジェクトなので、うまくいかないチームは本当にうまくいかなくて、過去には図書館で殴り合いの喧嘩が起こったとかも聞きました。笑

 

そんな中、うちのグループは本当にラッキーなことに、一人一人のコミットが高くバランスもとれた良いチームになって、大学院でいろいろ辛いことはあったけれど、これだけは本当に神様ありがとう、と折に触れて感謝していました。ほんと、そうじゃなかったら心折れてた…

 

ちなみにEPD Workshop では他の専攻より比較的問題が少ないみたいで、EPDの人たちは「EPDを専攻するような人は(開発系で働くような人は)いい人が多いから問題が起きにくいんだよ」とか自画自賛していましたが笑、多分、他の専攻の人たちは他で自分たちに都合がいいこと言ってる…。SIPAでは、こういう専攻ごとの偏見ジョークみたいなのがよくあります。※SIPAの専攻一覧が気になる方は下記リンクご参照ください。

 

 

メンバー紹介

うちのチームのメンバー全6名を紹介します。

  • すごくしっかり者のアメリカン女子がプロジェクト・マネージャー。これまであった人の中でトップレベルの几帳面さでよく気が付いて、嫌な感じじゃなく細かくオーガナイズしてくれて、それでいて自分の意見を通すのではなく、周りの意見を聞いて進めるタイプのリーダーで本当に助かりました。ムキムキの婚約者あり。
  • UCLAの学部卒から直接SIPAに入った(23歳!)のアメリカン。私の方がずっと年上なのに、私よりはるかにしっかりしていて、細やかで、とても頭いい。家族がインド出身で、ボリウッドにも詳しい。
  • 唯一の男子もアメリカン。カリフォルニア出身で、ピースコー経験もありたくましい。絶妙なリラックスさと頭の良さと優しさで、いろいろ見習いたい人物。
  • いつも全力投球なドイツ女子。チームの中で唯一感情の起伏が激しいタイプで、でも本当に頑張り屋さん。結果いつも崖っぷちだけれど、パフォーマンス高い。
  • メキシカン女子。二人で組むこともよくあったし家も近所だから、一番よく一緒に話したかも。小柄でおしゃれなシティーガールだけど、テコンドーの達人。テキーラとはショットで飲むのではなく、良いモノを味わって飲むものだと教えてくれた人。
  • 私、コツコツやることだけが取り柄のBudget Officer。

 

 

リサーチ経過

グループが11月に出来上がってから、チームビルディング、各グループに一人つくアドバイザーの教授とのミーティング、クライアントとのやり取り、プロジェクト計画書の提出、予算の策定、現地でのインタビュー内容の精査、インタビュー先とのスケジュール調整等、ガンガン進めました。

これはもはや勉強というか仕事という感じです。自分の職務範囲に関する知識を深め、チームメンバーと話し合い、各々期日までに質の高いアウトプットをしていくという…

SIPAでの大学院生活は全般的に多かれ少なかれそういった性質があるのですが、EPD Workshop は特にそうです。

 

そしてチームの内2名が初期調査の為、1月に二週間ウガンダでフィールドワークを行いました。この最初のフィールドワークが今後のプロジェクトの方向性に関わる重要なものなので、チームとして成功させるために、私を含む残りのメンバーも各地からサポートします。つまり、冬休み中もSkypeミーティングを繰り返し、ロジを固め、インタビュー先へアポ取りし、文献を読む!読む!読む!ということをしました。

 

そこから年明けには中間発表をしたり、1月にしたインタビューの録音を手分けして文字起こししたり、3月のより大規模なフィールドワークの方針を固めたりしたりと、バタバタしながらあっというまに3月になりました。

 

 

ウガンダでのフィールドワーク

SIPAでは3月に一週間の春休みがあるので、その一週間にもう一週つなげて、二週間のフィールドワークをしました。1月に行かなかった残りの4人(私含む)が行きます。

 

主なミッションは下記二点です。

1)政府やNGOの人たちにインタビューして、ウガンダの土地のシステムやその問題、腐敗の有無と影響、ジェンダーに関する取り組み等を理解する

2)地方の村(中部1つ、北部3つ)に行き、村人たちへのフォーカスグループインタビューをして、彼らが土地関連で直面している問題、ICTの活用状況、ジェンダーによる違い等を理解する

 

基本二人一組で手分けして一日に複数のインタビューを行いました。最終的に、1月のフィールドワークと合わせて、インタビューは49人、フォーカスグループは15グループ(128人)行ったので、他のグループと比べてもすごく計画的に沢山できた結果となったと思います。

 

そしてもちろんとても疲れました。インタビューの原稿は既に準備してあるけれど、いろんな場所に行って、待って、説明して、話してメモ取って。

政府関連の皆さんはだいたい英語できるけれど、なれないアクセントに苦戦したりもしたし、村では現地語なので通訳の人を通すけど、時間がかかるし通訳の人もプロじゃないからあまりスムーズにいかなかったり。

インタビューはその後、文字起こしするために全て録音しているのですが、私が通訳さんに「今なんて言ったんですか?」「一文ずつちゃんと通訳してください」と何度も言ってる声も録音されています…

 

政府の人たちは、思ったより「コラプションが問題だ!」と言うけれど、実際あまりにコラプションが大きすぎて根深かったり。理論上「コラプションはだめだ」と言っていても、実際のところ本当にコラプション根絶しようとできているのか疑問だったり。

村人たちは、たいていとても貧しくて、父権的で女性は権利が限られて、コラプションのせいでお金がないと何事もうまく進められず…という。インタビューしていて、悲しい気持ちになったり怒りを感じることが多々ありました。

 

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最終レポート

内容については書き出すときりがないのですが、フィールドワークから戻って、5月頭までの間に議論と個人作業を積み重ねて、72ページの大作のレポートができました。文献リサーチやインタビューからの分析と、それを踏まえたクライアントの Transparency International への提言をまとめたレポートです。

ICTの活用にとどまらず、ウガンダでの関連法令の成立や政府職員・警察へのトレーニングへの働きかけ、また各種アドボカシーについての提言をしました。

 

ご興味あれば下記リンク先、Land Portal という土地関連のガバナンス向上の為の情報提供サイトに掲載されておりPDFでダウンロードできます。

 

 

最終プレゼン

最終レポートを提出すると共に、クライアントと大学院へのプレゼンをすることが最終成果物となります。

プレゼンは代表者数名でやるのがスムーズだろうという話になった時、じゃあ私がやることはないだろうな、と最初は思いました。

なぜならはっきり言って私の英語力はまだまだだし、あとのメンバーは英語ができるってだけでなく人前で喋るのが上手な人たちだから、わざわざ私がその代表になることはないな、と思ったわけです。

 

でも週一回のアドバイザーの教授も参加するミーティングの時に、教授が

「もしこの中に、プレゼンに苦手意識がある人がいるなら、これはまたとない機会だから、そういう人こそ進んでやるべき」

とおっしゃいました。

 

その時私は「私のことだな…」と思ったし、たぶんみんなも私のことだと思ったと思います。

 

私もせっかくの機会だから挑戦したい気持ちはあるし、ただ一方で、これまでずっと質にこだわってこだわって頑張ってきたプロジェクト。最後の大事な場面でも最高のアウトプットを出すためには、他の人がやったほうが全体のためになるのではないか…と思い、立候補していいものか悩みました。

 

でも結局、立候補とかじゃなくて、なんだか自然な流れで私とメキシコ人のメンバーの二人でやることが決まりました。まわりでやんわりとそういう風に持って行ってくれた感じがあります。(アメリカ人三人はレポートの最後の文法チェックやるし、ドイツ人の子はレポートのデザインを整えるから、じゃあプレゼンは二人でやってね、みたいな感じで。)

私がプレゼン自信ないのを知っていて、それでちゃんと信頼して任せてくれたことに感謝。そしてその責任を背負って、がんばらなければ。

 

ということで、パワポもヴィジュアルに気を使いながら準備し、みんなの意見を聞きながら何度も練習し、発表当日の朝までリハーサルをして、無事プレゼンを終えることができました。すごく緊張したけれど、落ち着いて、メモをあんまり見ないで喋ることができたと思います。

学校でプレゼンを見る機会が多くて、パワポを含め魅せ方を学ぶ機会が多数あったけれど、これが集大成という感じ。

 

パワポの例)

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終わった後、校舎の外に出たらパリッとした快晴で、まだ5月にもなってないのにすごく暑くて、学校のキャンパスの中の木々の鮮やかな緑色をまぶしく感じながら歩いた時の「やったぞ!」という気持ちを今も覚えています。

 

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おわりに

こんなに長文だけれど、まだまだ書ききれないことだらけの、とても濃密な7カ月のプロジェクトでした。

本当にこれができてよかったと思うし、教授やチームメイト達に心から感謝しています。

グループワークの中で日々学んで、自分のパワーアップも感じられたし、テーマの部分、特にコラプションとジェンダーについては、理論的な背景知識も身に着けさらに関心を持つようになりました。

しかも、来年からの仕事の面接時にこの経験をアピールしたことが大きかった気がするので、間接的にキャリアにも繋がったと思います。

大学院生活の最後に、大変だけど良い経験でき、大きな達成感がありました。