腐敗

今、二か月弱の出張でホテル住まいです。

が、ホテルの無料Wifiが驚くべき遅さで実質ほぼ使えず、追加料金を払えばより良い回線を使えるとのことだったので、そのシステムをホテルの人に聞いてみました。

そこで現れたのがIT担当のAさん。

二人きりになったところで説明を聞くと、

 

A :「俺に直接払えば、滞在期間中ずっとハイスピードのWifiに繋げられる。」

私:「え、フロントに普通に払うのではないの?」

A :「フロントの正規料金は高い。俺に払うなら10,000 cfa でOK」

 

…正直なことを言うと、一瞬、払っちゃおうかという考えも頭をよぎってしまいました…

なにしろ今現在PCで作業するのにも支障があるし、友達が一人もいない都市で、そんなに気楽には一人で出歩けず、娯楽もない状態、ネットが使えないと気分転換が…

というかNetflix 観たい…

(今はOrange is the New Black という、超アメリカンでありえない展開のドラマにはまっています)

 

そして、10,000 cfa って、約2,000円!

たった2,000円で、二か月間のネットが保障されるなら…

 

でも、だめだめ。ガバナンス分野に興味を持って勉強してきて、修論プロジェクトではウガンダの腐敗に切り込んだ私がそれをしてしまっては、と思うし、しかも私は今インターンとは言え国の機関の立場で来ているのだし。

ということでお断りしました。

 

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(ホテルの窓からの風景)

 

私はこれ書くことで、自分の正義感を振りかざしたいとか、こういう時にお金を払ってしまう人を批判したいわけではなくて、、

…いや、後者はあるかもしれないです。

というのは、腐敗や贈賄が機能してしまうのは、払ってしまう人がいるからですよね。 政府の腐敗の問題を勉強していても、「お金を要求する役人が悪い!」ってなりがちで、それはもちろん大前提として、でも「払わない」って選択を取る正義も同時に求めるべきだな、ととても思います。

もちろん、生活かかっている人はワイロを払ってでも目的を達成しなければならなかったり、むしろワイロを払う以外でプロセスを進める方法がなかったりする場合はあるのですが。

そういう弱い立場の人たちに、えらそうに「絶対払うな」なんて言えないのですが。

でも、「ワイロは正しくない。払わない!」って決意を持つ人が増えればそれは確実に状況を変えるパワーとなるし、少なくともお金に困窮しているわけではない私とかは、払わない強い決意が必要だと思います。

今回のケースは、政府役人がやるようないわゆる腐敗とは少し違うけれど、「腐敗的スピリット」だし、まあ、業務上横領。それに手を貸すわけにはいかない。

 

そして、コラプション(腐敗)に遭遇した時の次の一手、レポーティング(通報)についてですが、自分の仕事内容を考えると、言った方が多分ホテルのためになるし、ホテルの人は毎日よく話している人だから、言おうと思うとすぐ言えるんですが、今のところ言っていません。

いろいろある理由の一つは、言いつけて、Aさんが解雇になったりしたら人生を変えてしまうというリスクを今引き受けられない、というものです。たぶんこういうことはよくあって、これだけじゃ解雇になったりはしないかもしれませんが…さっきフロント言ったら普通に気軽に話しかけられたし…

あと、逆恨みされたりしたら怖い、という完全に自分の保身の理由も大いにあり。 ITの人は一人しかいないみたいだから匿名で報告することは実質できず。

そういうわけで、ホテルの人に伝えていないから、そのAさんは別の人にまたその取引(?)を続けるだろうから私は状況を変えていなくて、結局ずるいし、Justiceをもたらしていないのだ、と思います。

これはこれで腐敗に加担しているのかもしれない、と悩まされる、本当に良いことが何もない出来事でした。

 

アフリカあるあるとはいえ、小心者の私は心がちょびっとすり減りました。

(すぐ戻るけど)

みなさんならどうするでしょうか。


【後日談】

この出来事の一週間後くらいに、イジドールさん(同僚のカメルーンコンサルタント)が「あのIT担当はよくない!」と朝一番で言うので、

「(そうそう!)なんで?」

と聞いたら、10,000 CFA で繋いであげるって言ってるのに、私が払わないから、私のことを説得するようにイジドールさんに言ってきたとのこと。


な、なんて大胆なんだ!

(イジドールさんもホテルの人と友達だから筒抜けになってもおかしくない)


イジドールさんは、

カメルーン人だったらすぐ払っちゃうし、フランス人でも払うよ(←偏見?)。結果、みんなが彼の方法で繋いだら結局その回線も遅くなるし、ホテルへの損害が甚大。はっきり彼を名指ししないまでも、ホテルに伝えなくては」と言っていて、

私:「でもITの人、一人だからまあわかっちゃうよね」

イ:「まあ、解雇にはならないと思うよ…」

という会話をしたのでした。