いろいろおもしろい、ジェーン・スーさんの本をまた。
これは対談集で、7人の人とジェーン・スーさんが話している。
一番最初の光浦靖子さんのが、全然共感できず、一番いまいち。
やっぱりテレビかつ、お笑いの世界という特殊な世界の論理の中で生きそれが染みついている人という感じがして、私が思っている多様性や寛容さとは相容れないと思った。ジェーン・スーさんはすごくやわらかに「それはそれで」仲良く受け止めているけれど、先輩世代の影響力ある女性が言う内容としては、ジェンダーステレオタイプやルッキズムを助長する考えを引きずっていてちょっとモヤモヤ。
脳科学者の中野信子さんとの回が、やっぱりおもしろくてためになる。
ジェーンさんと中野さんだけの対談集の件は前に別の記事で書いた通りすごくおもしろかったし、今回もいろいろと脳が刺激された。
はっとしたところ。
日本が「みんな同じ」じゃないと排除されがちなことについて。
(ジェーン)ここに混ざったら危険というセンサーが働く人と、このなかに入
ってないと危険というセンサーが働く人の違い。 (中野)それを示唆する実験はなくはないよ。間違ったルールを教えられて
、途中でその間違いに気づいた時、それでも教えられたルールに従 う人と、自分のルールに従う人、二手に分かれる。 それぞれの遺伝子を見ると、ドーパミンの分解酵素のタイプが違っ てる。自分で意思決定することを気持ちよく思うか思わないか。意 思決定を気持ちよく思わない人は自分で服を決めるのも得意じゃな いし、みんなが買うから買うとか、みんなが観てる映画だから観る とか。そうしたタイプが日本には七割以上いるんだよね。 (『私
がオバさんになったよ (幻冬舎単行本)』(ジェーン・スー, 光浦靖子, 山内マリコ, 中野信子, 田中俊之, 海野つなみ, 宇多丸, 酒井順子, 能町みね子 著)より)
日本人がそういう傾向強いのわかるし、だから第二次世界大戦の時みたいに全体主義になる時怖いし、今もそういう流れが確実にある。私もそういう血を引いている感じはする。自分の確固たる判断軸を持ちたい。
あと、田中俊之さんという、男性学研究者との回もおもしろかった。
日本では90年代後半から2010年代前半まで十四年連続毎年
三万人が自殺しました。内訳を見ると、女性が一万人に乗った年は 一度もない。常に男性が二万人以上亡くなっています。 (中略)同じ日本という社会を生きていて、性別が違うだけで自殺者数がこ れほど違うのは、不思議なことです。 (中略)
そもそも、「おじさんは疲れている」とみんなから思われています。おじさんに対する固定観念です。だから、働き過ぎて多少の無理をしていても、本人も周りも「普通」だと受け止めてしまいます。
(『
私がオバさんになったよ (幻冬舎単行本)』(ジェーン・スー, 光浦靖子, 山内マリコ, 中野信子, 田中俊之, 海野つなみ, 宇多丸, 酒井順子, 能町みね子 著)より)
かなしい。
男性の自殺者が多いのは、男性は逃げ場がない、弱音を吐きにくい、みたいな社会規範が強いからだと思う。「男の子は強くなきゃ」みたいに育てられる呪いも。
死ぬくらいなら、仕事しなくても、投げ出しても、お金稼がなくてもいいんだ、ということがどうしても浸透しなくて、追いつめてしまうのは本当に悲しい。
そして、やっぱり能町みね子さんの回もとってもおもしろかった。
前半、二人の共通点があんまりないという話をしているのだけれど、最終的に二人とも「結婚していない、主夫のような男の人と暮らしている」というものすごくスペシフィックな共通点が。
サラリーマン夫婦の夫側を自分がやるようになるとは思ってなかった。
(『
私がオバさんになったよ (幻冬舎単行本)』(ジェーン・スー, 光浦靖子, 山内マリコ, 中野信子, 田中俊之, 海野つなみ, 宇多丸, 酒井順子, 能町みね子 著)より)
既存の家族の在り方にとらわれない生き方の話を読めてよかった。
ジェーン・スーさんの本は、最近「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」も読んだ。通常の会話の中にフェミニズムが何気なく入り込んでいく自然さが好き。
フェミニズムを前面に押し出しているわけではないのだけれど、多様性や寛容さを幅広くカバーすることで、それが根底にあるフェミニズムを自然と体現しているというか。
それにしてもタイトルがすごい。
終