【読書】 ジェーン・スー&中野信子 「女に生まれてモヤってる!」

 

モヤることはモヤってるし、でも常にモヤっているわけではないしモヤりに支配されないよう、モヤってるのを自分で無視しながら折り合いをつけて生きていくのだけれど、でもそれを少しだけでもすっきりさせるものがあるのなら、それはライフハックとして活用すればいいのですよね。そうして活用できる本。

そしてモヤっていることは、よく考えている頭のいい他者に明快に語ってもらえることが一番よね、という感想につきます。

 

女に生まれてモヤってる!

女に生まれてモヤってる!

 

 

 

タイトルが軽くて取っつきやすい感じがして、実際に気楽に読み始められるものなのだけれど、扱っているテーマは言ってみれば社会の不均衡であるので、やっぱりいろいろ考えさせられる。そして、データや事例、あらゆる角度からの物の見方が示されているので、勉強になる。

 

 

私が特に「まさに!!」となった部分を引用したいのですが、Kindleでハイライトした部分が多すぎてこりゃ大変だ。

たとえば、

 

たとえ政策の議論をしていても、感情的なケンカみたいに演出される。そして「女の敵はやっぱり女」と世間が言う。でもさ、「女の敵は女」は本当にもうアホのもの言いだからやめたほうがいいよ。たとえば男同士の意見が対立して、どちらかが相手を失脚させたとしても「やっぱり男の敵は男だよな」なんて言う人いないよね。女同士のときだけだよ、「怖い、怖い」とかさ。その裏には、女は優しい、女の気持ちはひとつ、利益もひとつ、女は常に一枚岩である、という思い込みがあるんだよね。その前提がまず違ってるから。女というだけで、一枚岩にはなれないです。(スーさん)

(『女に生まれてモヤってる!』(ジェーン・スー, 中野信子 著)より)

 

「いつまで経っても自分に自信が持てないのは、対極的な価値観が混在した時代だからでもあります。女性も社会に進出しましょう!輝きましょう!という新しい指針は、従来型の女らしさとは相性が悪い。ふたつの価値観が拮抗しているのが現状で、どちらか片方しか持ち合わせていない女は、隣の芝生を見て自動的に欠落感を抱くことになります。また、どちらも持っている女、つまり働きながら家庭を持つ女は、どちらも中途半端にしか役割を果たしていないような気になるという落とし穴もあります。相反するふたつの価値観のもとで満点を取るためには、仕事でも家庭でもスーパーウーマンにならざるを得ない。これも無理ゲーです。」(スーさん)

(『女に生まれてモヤってる!』(ジェーン・スー, 中野信子 著)より)

 

 

あと、中野さんが脳科学者だから、脳に関するこれまで知らなかった知識とかハッとすることもたくさん書かれています。

「一般的には、記憶力のいい人のほうが新しい環境に適応しにくいと考えられている。(中略)学習能力と記憶力ってトレードオフなんです。学習能力って、アンラーニング(学習棄却:一度学習した知識や価値観を意識的に捨て、新たに学習し直すこと)できたほうが実は高いのね。ちょっと逆説的ですけど。これまでの間違った記憶を忘れることで新しい学習をスピーディーに習得できる。特に運動学習なんかではそういうことが言われている。これは東大の先生が実験していますが、アンラーニングの速さが学習の速さでもあるという。 これは人だけでなく組織のあり方においても共通しているんです。「過去にこういう成功体験があった!」という記憶にずっと捕らわれてしまうと、新しい発想が生まれてこなくなる。忘れる能力のほうが、実は学習には重要なんだろうね。」(中野さん)

(『女に生まれてモヤってる!』(ジェーン・スー, 中野信子 著)より)

 

 

ほかにもいろいろあるものの、とにかく、モヤを少しすっきりさせたい気持ちの人にはこの本開くのおすすめします。

もちろん、すべて同意じゃなかったり考えさせられてまた別のモヤが広がるかもしれないけれど。 それこそ知の広がり。

 

先日紹介した「私たちには言葉が必要だ」は、女性だけでなく、マイノリティ側の状況を知る意味で男性にも読んでもらいたいな、と思ったけれど、

こちらは女性がモヤりを少しすっきりしたい時に読むのに適した本で、やっぱ女性におすすめかも。特に大学入る前とかの若い世代とか、一読してほしいです。

 

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それにしても、ようやく2019という数字の未来感になれてきたと思ったら、年末までの予定を考えるだけでもうあっという間に今年も終わりそう。2020年なんてとんだ未来で、おどろくばかり。

 

終わり