【読書】 安田陽「世界の再生可能エネルギーと電力システム [経済・政策編]」

 

大雨、洪水、サイクロン、干ばつ、砂漠化、そしてバッタ襲来等の自然災害の脅威を受けまくるアフリカで、気候変動課題のことを考えると、今後世界はどうなっていくのかと心配がむくむくと膨らんでいく。

 

気候変動はすべての社会課題に繋がっている。

 

そんなこんなでやみくもに心配するだけじゃなくて、もうちょっと学ぼう、特に再生可能エネルギーについてもうちょっとよく知りたい、と思って探して見つけた本。

 

世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編 (NextPublishing)

世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編 (NextPublishing)

  • 作者:安田 陽
  • 出版社/メーカー: インプレスR&D
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: Kindle版
 

 シリーズでいろいろなバージョンがあるけれど、私は今一番関心がある「経済・政策編」を。

 

最初に著者の紹介があって、

元々、工学系のバリバリ「理系」だったところから、

「エンジニアが技術だけで何でも解決しようとしても限界がある」

「せっかくの技術を活かすも殺すも政策や社会システム次第」

(『世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編 (NextPublishing)』(安田 陽 著)より)

と 思うようになって、経済・政策の方向へ舵を切ったとのこと。

こういうこと背景を聞くとぐっと信頼できる。

技術と、経済・政策を繋ぐという立場は、言うは易く行うは難しに違いなく、すごく重要な役割。

 

そして、本の内容がとてもわかりやすい。

大学院の経済の授業で習った概念とかも出てきて、いろいろ繋がったし、

現状のシステムが、

 ・外部コスト(※)

 ・便益

 ・エネルギーの安全保障

から考えて、経済的に「理想的な完成形」、最適解でないこと。

情報が不均衡であることから一般の人たちが経済合理的でない選択(逆選択:averse selection)をしてしまったりすること。

がよく理解できた。

 

※外部コスト、あとその内部化とは:

「外部コストは売り手Aさんと買い手Bさんの取引の「外」に出てしまった隠れたコストだということを述べました。本来必要な対策を行うべきところを行わなかった分だけ(不自然に)安くなり、売り手Aさんと買い手Bさんは共にハッピーですが、この商取引に全く関係ないCさん(近隣住民、将来の地球市民)が迷惑を被る可能性があります。したがって、本来とるべき必要な対策コストを元のAさんとBさんの商取引の価格に反映させ、市場メカニズムの「内部」に戻してあげることから、内部化と呼ばれています。」

(『世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編 (NextPublishing)』(安田 陽 著)より)

 

 

一見、停電も少ないしうまくいっているように見える現在のシステムが、実は将来的に多大なコスト負担を強いるもので、実は「うまくいっていない」ということを認識しないと、改善もできない、ということ。

 

結構、今の政策やシステムのうまくいっていない点のことがたくさん書かれているので、業界内ではいろいろ賛否両論もあるのかもしれない。でももちろんこんな電力や気候変動を扱う未知の複雑な話題で完璧な状態が達成されていると考える方が不可能で、著者が言うように、現状の問題点にきちんと目を向けることから始めないと改善もできない。

 

あと、例えば FIT制度*(FIP**も)についてもやっと理解できたけれど、こういうちょっと複雑な制度や法律を、あらゆる要素を考えて作る人たちがいるんだな、ということ。そしてそれが一度でパッと最適な形で整備されるわけはないので、時代に沿った見直しや、そのための研究、改革、政策提言等が不可欠なんだな、と漠然と思いを馳せる。

 

FIT制度、FIP制度 

再エネで発電した電気を電力会社が一定の期間;

 *FIT (Feed-in Tariffs) 固定価格で買い取る。

 **FIP (Feed-in Premiums) 変動する市場価格に一定額のプレミアを上乗せした価格で買い取る。

 

 

とにかく本当にわかりやすかったので知識の土台としてこの本からはじめられてよかった。

あとは、もっといろいろ読まないと。

 

気候変動は、本当に今の仕事の分野(アフリカ、緊急人道支援、開発)にも密接に関わっていて、今後もそれは変わるどころか加速するのは間違いなさそう。

 

おわり