【読書】 佐久間裕美子「My Little New York Times」
NY在住ライターの佐久間裕美子さんが2017年7月5日から365日書き続けた日記がまとめられている本。
2017年と言うと、その年の頭にトランプ大統領が就任したので、その後の激動のアメリカの暗かったり、不安だったり、でも変わらないところとかも、とても興味深く読んだ。
Kindle版はないので日本に帰った時に買ったのだけれど、手に取ってみるとこれはたしかに紙で持つのが素敵な本だな、という手触り。新聞みたいなレイアウトで、ぎっしり文字が詰まっているから見た目の厚さよりもさらに長く楽しめるお得感(?)も。
私はベッドサイドに置いて、いつも寝る前に何日か分(日記なので)を読んで、寝るという楽しい日課ができた。
それにしてもトピックが幅広く、あらゆることへの考察がすごいし、これを365日分続けられているのがすごい。そして交友関係の広さとフットワークの軽さがすごい。毎日出かけてなにかされている様子。日々生きている世界から受け取ることの情報量が普通の人の何倍もあるのだろうな。そういう方の書くものはやはり当然濃くておもしろい。
そしてその幅広さの中でも、やはりトランプ就任で揺さぶられるニューヨーカーをはじめとしたアメリカで生活する人々、その変わりゆく風景が描かれていて。政治やその影響のことを考えるととても暗くなってしまうのだろうけれど、その中で力強くというか、政府がああなったことでより重要性が増している政府以外の存在、つまり市民社会、消費者、ジャーナリズム、ライターの役割、みたいなことに希望を感じさせられる内容だった。
私も垣間見たNY
私も2017年の半ばまで、2年間だけNYにいたので、この時期を本当にほんのちょっとだけれど垣間見た気がしていて、やはり特殊な雰囲気だった。
本当にトランプ大統領に決まっちゃった時のことはよく覚えていて、まさかそんなことことになるとは思っていなかったのがあれよあれよと選挙結果のアメリカ地図が赤く(共和党の色に)染まっていくのを見て、
「え?本当にアメリカはトランプを選ぶの?」と心臓がどくどくしている間に、本当にそうなってしまった。
「え?アメリカ?」となった。
青ざめているアメリカ人のルームメイトと、
「なんて言ったらいいかわからない…」と言い合ったのが思い出される。
その後、大学院留学先のキャンパス内もざわざわして、みんなが何か言わなければいけない、傍観していてはいけない、という雰囲気だったように思う。
教授がクラスルームで「胸に抱えていることやつらいことがあったら話し合おう。一人で抱え込まずに、この難しい時をみんなで乗り切ろう」みたいなこと言ったり。
1月に早速ムスリムが多い国からの入国が制限されたりして、当時のTwitterを見返したらこんな投稿してた。
そしてキャンパス内ではたくさんの集会が行われた。
いてもたってもいられない、寒さも合わさって、大学全体が灰色の時期だったように思う。
ニュースでトランプの声聞くと心底落ち込む、って声をよく聞いた。
#MeToo が広まったのも、2017年の後半からだったのだな。
本全体から学んだこと
話がそれたけれど本の内容に戻って。
とにかく多岐にわたる内容の中で、
生活の根本的な部分を思い切り見直して、変えていくアクション(一時的にでも)が多いことにインスパイアされた。
大量消費にNoと言い、なるべく個人経営の店を利用、服は友達が作るものかヴィンテージ、Fashion Activism、肉を食べない、マリファナの取材、アート、とか。
よりよい社会について日々考えられていることが一つ一つの行動に表されるかっこよさよ。
長年やってきたことを変えるのは勇気がいるけれど、私も漫然と日常生活を過ごすのではなくて、普段の普通の行動をもっと見直していきたいと思った。住む場所が違えば行動も変わるので、同じことをするわけではないけれど、より社会によい方法で、エシカルで、健康的で、思い入れのあるものを、って軸を持ってたらいいかなと。ああいう政権下で気持ちがくじかれる時であっても、イチ消費者個人としてそれをやるかやらないかで差がでてくる気がする。というか個人がより信念を持つことが重要なんだろうな。こんな時こそ。
各記事に関連するQRコードがついているので、興味あるとそこから深堀りできたり、いろんな本やNetflixの番組も紹介されているからさらにそこから広げられるのもおもしろかった。すごい情報量だ。またしばらくしたらもう一回読もう。
佐久間裕美子さん
著者の佐久間さんのことを最初に知ったのはたしかこの対談。
「『裕美にもそのうちいい人ができるよ』と言われたりすることに、イラついていたことがあるの。でも、最近それも、自分の選択を良かったと思いたいという気持ちや、インセキュリティの現れ方のひとつかもなって思うようになった。」という部分で特に興味を持った。どうしたらそういう風に思えるようになったのか。
それでもっと読みたいと思って、「ピンヒールははかない」を読んでみて、そしたらすごく惹かれて、3回読んで、毎回違うことを考えさせられ、
続編よみたいです
最新刊の「真面目にマリファナの話をしよう」も読んで、
真面目な本。歴史、現在、これから。
これが3冊目。
若林恵さんとのポッドキャストもとてもおもしろい。
配信されたら即聴く番組のひとつ
終