2022年に読んだ本 おすすめ10選!

 

上野千鶴子・鈴木涼美「限界から始まるー往復書簡」

山崎ナオコーラ「ブスの自信の持ち方」

岩井建樹「この顔と生きるということ」

松田青子「自分で名付ける」

朝井リョウ「正欲」

マット・ヘイグ「ミッドナイトライブラリー」

シンジア・アルッザ他 「99%のためのフェミニズム宣言」

田房永子「男の子の育て方を真剣に考えたら夫とのセックスが週3回になりました」

斉藤章佳「しくじらない飲み方」

清田隆之「自慢話でも武勇伝でもない『一般男性』の話から見えた生きづらさと男らしさのこと」

 

 

いろいろな理由で、いわゆる「社会のレール」から外れてしまったり、それでなくても生きづらかったりということについてもっと知って考えたいというテーマがたぶん自分の中にずっとあり、その関連の読書が「この顔と生きるということ」とか「しくじらない飲み方」かも。

 

 

「この顔と生きるということ」は、特徴的な見た目の持っている人々のそれぞれのエピソードについて。

一章ごとの話では語りつくせないような苦労がたくさんあるのだろうけれど、丁寧に取材されたうえで読みやすくまとめていただいている話にそれぞれ考えさせられました。

 

 

「しくじらない飲み方」は、同じ著者の「男が痴漢になる理由」を読んでおもしろかったからその流れで読んだもの。

痴漢というのは完全なる性暴力で犯罪であると同時に、加害者側から見ると「依存症」であり治療が必要であるということがわかり、依存症全般に関心が湧いたし、社会の様々な問題が依存症に起因していること、大いにあるのだなと感じた。

ひどいことした当事者に治療?そのためにさらにお金をかけて?とも思うけれど、治療で緩和される苦しみは治療された方がいいし、本人の治療が、周りの人たちの苦しみを軽減する意味でも重要とわかった。

あらゆる問題の背後にはアルコールがあるというのも、そういう視点で物事を見てみるとたしかに。

お酒を楽しむことや、男の人はお酒強い方がいいという風潮、そして嫌なことをお酒で忘れる・・・そういったことからアルコール依存症の道に足を踏み入れてしまうのは、実はすごい紙一重なのではとも思った。

 

 

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そしてこういった関心、つまりいわゆる「社会のレール」から外れてしまったり、それでなくても生きづらかったり、弱さとか脆弱性と社会の観点というとこで他にこれまで読んだのでいうと、上述の「男が痴漢になる理由」も含めて、下記のあたりも、(後から振り返るとですが)通じているかも。

 

 

 

男が痴漢になる理由

男が痴漢になる理由

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これらを見ると、「男の人の生きづらさ」みたいなテーマにも関心が強いことが(我ながら)うかがえます。

 

ジェンダー不平等な社会で生きるということで直面する理不尽さは、あたりまえだけど

「男が得、女が損」

ということでは全然なくて、男性の中でも「上位数%」というか、既得権益を持っていていわゆる昔ながら「男らしい」の基準に当てはまっていて既に成功している人たちが一番得をする社会になっていて、男性の中でもそこから外れた人たちはやっぱり大変なのだよな、という。

 

だからジェンダー平等の為に、多くの男性と一緒に共闘できたらいいのだけれど、そうはならないのがこの世の悲しみなのだよな。

弱い人がさらに自分より弱い人を探すというのがよく見られる。

 

(そういうことを考えるといつも思い出すやつ)

出典:峰なゆか「AV女優ちゃん 1巻」扶桑社 2020年

 

 

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ちょっと話はずれたけれど、その関連で多分、

清田隆之「自慢話でも武勇伝でもない『一般男性』の話から見えた生きづらさと男らしさのこと」

も読んでいて、これは逆に一見順調そうな「一般男性」たちの例を生々しく読めてジェンダー視点の分析もおもしろかった。

 

 

仕事でバリバリ働いていてコミュ力高くて格闘技もしてていかにもモテそうな男性が、裏ではSNSで暴言吐いたりしてる話とか…

 

 

 

そいういう風に見ていくと、2022年は女性著者によるジェンダー関連の本、というのは意外にあんまり読まなかったのかと思いつつ、こちらはとても勉強になりました。

 

 

ちょっと極端だけど、ああ、そっちからも見なくちゃな、という議論。

シェリル・サンドバーグのLean in嫌いすぎで笑っちゃいました。

 

(サンドバーグに代表されるような)リベラル・フェミニズムが「特権を持つごく少数の女性たちが企業と軍隊の出世階段を上っていけるようになるという、そのことばかりに尽力した」こと、そして「それがほんとうに求めているのは、平等ではなく能力主義(メリトクラシー)なのだ」。

リベラル・フェミニズムは「特権的な人々が同じ階級の男性たちと同等の地位や給料を確実に得られるようにしようとする。もちろんその恩恵を受けられるのは、すでに社会的、文化的、経済的に相当なアドバンテージを有する者たちである。その他の者はみな、地下室から出られないままなのだ」。

経営者層の女性たち(リベラル・フェミニズムを進める層)は「抑圧をアウトソースする。」「発給の移民女性にケアの提供と家事を外注し、彼女たちに寄りかかれるように自ら膳立てすることによって。」

「端的に言って、リベラル・フェミニズムはフェミニズムの名をおとしめたのだ。」

 

 

あともう一冊関連して、上野千鶴子・鈴木涼美「限界から始まるー往復書簡」は、両著者の本と発信をいろいろ読んできたから、二人とも似ているところと根本的に相容れない部分がある気がして、どんななのかすごく気になっていた本、やっぱりとてもおもしろかったです。

 

 

 

「ブスの自信の持ち方」については別記事で書きました。

yaskolnikov.hatenablog.com

 

田房永子 「『男の子の育て方』を真剣に考えたら夫とのセックスが週3回になりました」については、こちらの記事↓↓に別途書きました。

yaskolnikov.hatenablog.com

 

 

 

そして小説はあまり読まなかったけど、2022年に読んだ下記の2冊はどちらも10冊選に入るおもしろさで良い読書でした。

 

正欲

正欲

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久々の小説で、外から単純に理解できることだけじゃなくて人にはいろいろあるのだということと、その隠れている部分に暴力的に踏み込むのは本当にやめなくてはと改めて思わされる読書になりました。

同時に、おもしろかったけれど、でも結局人や生物を対象にしてない(誰か、何かに迷惑をかけずに満たすことが可能で犯罪でもない)ことについての「異常」さは、苦難のごく一部しか映さないから難しいな、という感想も。

あまり細かく書くとネタバレになるから書かないけれど、人の苦悩を書いていても、もっと自分の「異常さ」が受入れらるものでないことに苦悩してる人たちにとっては、より孤独を感じるものなのかもな、という。

とにもかくにも、そうしたことを含め頭の体操になった点でも読んでよかったです。

 

 

お友達が勧めていたので読んだ本。

「ああしておけばよかった」というのが多い自分について見直せたから、忘れた頃にまたもう一度読みたい。

 

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2023年も、良い読書ができますように。

 

本年もどうぞよろしくお願いいたします。